
2026年8月、XはFor You(おすすめ)タイムラインのアルゴリズムについて、公式GitHubで公開するコードの範囲を拡大しました。
各種反応の「重み」など具体的な数値も確認できるようになった一方、「返信はいいねの10倍評価される」といった単純な読み方は正確ではありません。
この記事では、2026年9月26日時点の公式公開情報をもとに、8月の公開で何が分かったのか、企業のX運用ではどう受け止めればよいのかを整理します。
2026年8月、Xのアルゴリズムはどこまで公開された?
2026年8月13日、Xは公式GitHubでFor Youのアルゴリズムに関するコードの公開範囲を拡大しました。
5月に公開した前回の記事では、ThunderやPhoenixを中心に、フォロー内・フォロー外から投稿候補を集め、順位付けする基本的な仕組みを紹介しました。
今回の公開では、各種反応の予測をランキングへ反映する際の「重み」に加え、投稿を表示するかどうかに関わるVisibility Filtering、Phoenixのモデルを学習・実行するためのコード、フォロー外の投稿候補を探すSimClustersなども確認できるようになっています。
また、アカウントや投稿に付与された、表示に影響するラベルの集計を確認できる「Under the Hood」についても試験提供が案内されました。
ここで注意したいのは、これらの仕組みがすべて8月13日に新しく導入された、という意味ではない点です。今回の更新は、これまで公開されていなかった仕組みを含め、外部から確認できる情報の範囲が広がったものとして捉える必要があります。
前回の記事で紹介した「おすすめのタイムラインがどのように作られるか」から一歩進み、今回は「投稿をどのように評価し、どのような場合に表示を制限するのか」まで見える範囲が広がったことがポイントです。
8月の公開で分かった「ランキング」の仕組み
8月の公開では、For Youの候補となった投稿をどのように評価し、順位付けしているのかについても、これまでより具体的に確認できるようになりました。
公開コードでは、閲覧するユーザーが各投稿に対してどのような行動を取りそうかを予測し、その予測値を組み合わせて投稿のスコアを算出しています。
ここで重要なのは、公開された「重み」を、いいねや返信の実件数にそのまま掛ける数字として捉えないことです。
各種反応は“実件数”ではなく予測をもとに評価される
Phoenixでは、閲覧者が投稿を見た際に、いいねや返信、リポスト、投稿者のフォローなどの行動を取る可能性を投稿ごとに予測しています。
その予測値に、それぞれ設定された「重み」を掛け合わせ、投稿のスコアリングに利用しています。
8月14日には、Xの公式GitHubでもこの重みの読み方について補足しました。
たとえば、ある行動の重みが別の行動より大きかったとしても、「実際の反応1件が、別の反応○件分の価値を持つ」という意味ではありません。
「返信の重みが5.0、いいねの重みが0.5だから、返信1件=いいね10件分」といった単純な換算はできないということです。
閲覧者ごとに予測された「返信しそうな確率」「いいねしそうな確率」などに、それぞれの重みを掛けて評価しているためです。

公開された“重み”はどう読み解けばよい?
9月25日時点の公開コードでは、いいね、返信、投稿者のフォロー、滞在、動画を開く行動など、複数の項目に対して異なる重みのデフォルト値が設定されています。
ただし、これらはGitHub上で公開されているデフォルト値です。
XではA/Bテストなどによって異なる値が適用される場合があるため、すべてのユーザーに常時同じ値が適用されているとは限りません。
また、数字が大きい項目を増やせば、そのまま投稿が伸びるという意味でもありません。
たとえばプロフィール遷移は予測対象に含まれていますが、公開コード上の直接的な重みは0です。だからといって、企業のX運用において、プロフィール遷移に価値がないわけではありません。
プロフィールからWebサイトや商品ページへの訪問を促している場合は、ランキングへの直接的な加点とは別に、事業成果につながる重要な指標になります。
公開された重みは、Xが投稿をどのように順位付けしているのかを理解する材料の一つです。
企業アカウントでは、数字の大きさだけで施策を決めるのではなく、投稿の目的やターゲットに応じて、どの反応を見るべきかを整理する必要があります。
ランキングだけではない。「表示されるか」は別の仕組みで決まる
XのFor Youでは、投稿の表示順を決めるランキングとは別に、「その投稿を表示できるか」を判断する処理も行われています。
公開されたシステム構成を見ると、投稿候補を集めた後、ランキング前に重複投稿や閲覧済み投稿、ブロック・ミュートしたアカウントの投稿などを除外する処理があります。さらに順位付け後にも、Visibility Filteringによって投稿ごとの表示可否が確認されます。
そのため、投稿のリーチが下がった場合も、ランキング上の評価だけが原因とは限りません。
ランキングと表示制限は別の処理
Xの公式GitHubでは、ランキングとVisibility Filteringについて、それぞれ異なる役割を持つ仕組みとして説明しています。
ランキングは、候補となった投稿の中から「どの順番で表示するか」を決める処理です。
一方、Visibility Filteringは、投稿やアカウントに付与されたラベル、ユーザーのブロック・ミュート状況などを参照し、投稿の表示可否や見せ方を調整します。
公開コードでは、通常どおり表示する「ALLOW」、警告などを挟んで表示する「INTERSTITIAL」、表示対象から外す「DROP」に加え、投稿を別の表示形式に置き換える「Tombstone」や、一部の操作を制限する「LimitedEngagement」などの処理も確認できます。
つまり、ランキングで上位に選ばれた投稿であっても、その後の処理によって通常どおり表示されなかったり、表示対象から外れたりする場合があります。
企業アカウントでリーチの変化を分析する際は、「投稿の評価が下がった」とすぐに判断するのではなく、ランキングと表示制限を分けて考える必要があります。

Under the Hoodで表示に影響するラベルを確認可能に
8月13日の公開では、「Under the Hood」と呼ばれる透明性ツールの試験提供についても案内されました。
Under the Hoodでは、アカウントや投稿に付与された、表示に影響するラベルの集計情報を確認できます。現在の公開コードでは、法令対応によってアカウントや投稿の表示が制限された場合の情報についても、レポート対象として定義されています。
ただし、Under the Hoodですべてのリーチ低下の原因を確認できるわけではなく、利用には一定の条件も設けられています。
そのため、「シャドウバンを判定する機能」と捉えるのではなく、表示に影響するラベルの一部を確認するための情報として見るのが適切です。
公開された数字は固定の「攻略表」ではない
8月の公開によって、ランキングに使われる重みを具体的に確認できるようになりましたが、その数値は固定された「攻略表」ではありません。
実際、公開後にも一部の重みや設定は変更されています。 ある時点の数値だけを切り取って、「この行動を増やせば伸びる」と判断するのは避けたいところです。
8月25日のGitHubコミットでは滞在・動画関連の重みも変更
8月25日のGitHubコミットでは、公開コード上のデフォルト値として、滞在に関する重みが0から0.05へ、動画を開く行動の予測に対する重みが0.05から0.07へ変更されました。
一方で、Video Quality View(VQV)と呼ばれる動画視聴に関する別の項目は、0.05から0へ変更されています。
同じコミットでは、Phoenix Rankingが参照する行動履歴の集約方法についても、短い滞在を扱う設定から長い滞在を扱う設定への変更が確認できます。
さらに9月2日のGitHubコミットでは、投稿候補を探すPhoenix Retrieval側でも同様の変更が確認されています。
ただし、これらの変更から「長く見てもらえる投稿なら伸びる」「動画視聴は評価されなくなった」と判断することはできません。
滞在、動画を開く行動、Video Quality Viewはそれぞれ別の項目です。また、公開コード上の設定変更が、すべてのユーザーへ同じタイミング・同じ条件で適用されたかまでは確認できません。
ここから読み取れるのは、公開された重みや設定自体も継続的に調整されているという点です。

X自身もユーザー体験を見ながら調整を続けている
アルゴリズムの調整が続いていることは、7月の相互フォローに関する変更からも確認できます。
Xは7月10日、相互フォローしている投稿者の投稿について、閲覧者が返信する予測に加える重みを複数の値でA/Bテストしました。
7月13日には「20」という値を多くのユーザーへ適用しましたが、その後、フォロー外の話題が十分に表示されないといったフィードバックなども踏まえ、7月24日には「15」へ変更しています。
ここでいう「15」は、相互フォローしている相手の投稿が15倍表示されるという意味ではありません。 相互フォロー関係にある投稿者の一部の投稿について、返信する予測に対する重みを調整するための値です。
この事例からも、一度設定された数値がそのまま固定されるとは限らず、X側が実験結果やユーザー体験を見ながら調整を続けていることが分かります。
企業のX運用では何を見直すべきか
ここまで見てきた通り、Xでは閲覧者ごとの反応を予測しながら投稿を順位付けしており、その重みや設定も継続的に調整されています。
企業アカウントでは、公開された係数をそのまま投稿施策へ置き換えるのではなく、自社がXを使う目的と照らし合わせて見ることが重要です。
「何点もらえるか」より、誰にどんな反応をしてほしいか
公開コードでは、いいねや返信、リポスト、投稿者のフォローなど、複数の行動が予測対象になっています。
ただし、企業のX運用で考えたいのは、「どの行動の重みが大きいか」だけではありません。
たとえば、新商品の認知を広げたい投稿であれば、まだブランドを知らないユーザーへ届き、内容を知ってもらうことが目的になります。 一方、既存顧客とのコミュニケーションを目的とする投稿では、返信や会話が生まれることの方が重要になる場合があります。
同じXの投稿でも、目的によって期待する反応は変わります。
投稿を企画する際は、
を整理したうえで、見る指標を決める必要があります。
SNS上の評価と事業成果を分けて考える
Xのランキング上で評価される行動と、企業にとって価値のある行動は必ずしも一致しません。
今回確認した公開コードでは、プロフィール遷移は予測項目に含まれている一方、直接的な重みは0に設定されています。
それでも、プロフィールからWebサイトや商品ページへ誘導している企業であれば、プロフィール遷移はユーザーが次の情報へ進むための重要な接点になります。
反対に、いいねや返信を多く獲得できた投稿でも、想定していたターゲットに届いていなかったり、サイト流入や問い合わせにつながっていなかったりする場合は、運用目的によっては十分な成果とは言えません。
SNS内の数値だけで評価を完結させず、サイト流入、商品ページの閲覧、問い合わせなど、その後の行動まで含めて確認することが大切です。
変化を前提に、企画と効果測定を更新する
8月13日の公開後も、Xのアルゴリズムに関する調整は続いています。
9月2日のGitHubコミットでは、投稿候補を探すPhoenix Retrieval側でも、同様に行動履歴の集約設定が変更されています。
X Open Sourceも同日、オープンソース化したアルゴリズムについて、公開後も継続的に更新していることを案内しています。
こうした動きからも、公開された重みや設定が、そのまま固定され続けるわけではないことが分かります。
企業アカウントでは、仕様変更があるたびに投稿方針を大きく変えるのではなく、まず「今回の変更が、自社の運用や重視している指標に関係するのか」を確認したいところです。
そのうえで、表示回数やエンゲージメントだけでなく、狙ったユーザーからの反応やプロフィール遷移、サイト流入など、自社が設定している指標に変化があるかを見ながら、必要に応じて企画や評価方法を調整します。
ターゲットや投稿の目的は軸として持ちながら、アルゴリズムの変化と実際の投稿成果を照らし合わせて改善していくことが、継続的なX運用では重要です。
公開された数字は、運用を見直すための材料として捉える
2026年8月の公開によって、Xがユーザーごとの反応を予測して投稿を順位付けしていることや、ランキングとは別に表示可否を判断する仕組みがあることなど、これまで見えにくかった部分を以前より具体的に確認できるようになりました。
一方で、公開された重みは「どの反応を増やせば伸びるか」を示す固定的な攻略表ではありません。予測値に対して使われる数字であり、公開後もアルゴリズムの調整は続いています。
企業のX運用では、こうした公開情報を「施策の答え」として使うのではなく、自社の投稿や効果測定を見直すための材料として活用することが重要です。
たとえば、投稿の目的に対して適切な指標を見ているか、リーチ低下をランキングだけの問題として捉えていないか、SNS上の反応とサイト流入や問い合わせなどの事業成果を切り分けて確認できているか、といった点です。
アルゴリズムの仕組みを理解したうえで、自社の目的やターゲットに照らして必要な部分だけを運用へ反映していくことが、今回の公開情報を活用する一つの考え方になります。
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Xをはじめ、SNSの仕様やアルゴリズムは日々変化しています。
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